指導者が知っていることを伝えるだけでは「教える」事にはなりません。
物を教えるためには、きちんとした「目的」があること。
そのための「道筋」を指導者が把握していること。
そして、相手の心や体に、しっかりと根付くように、「教え方」を研究することが大切です。
学校の先生用にも、「指導書」があります。
私も、教員でしたので、新米の頃はよくその「指導書」も参考にさせていただきました。
じっくり読んで「なるほど!」と思い、やる気満々で、いざ授業に臨んでも、・・あれあれ??思った様に進まないこともしばしば。
子供たちは、ちっとも興味を示さないし、オロオロしながら「静かにィィィ~~」なんて大きな声で、生徒達をまとめようと焦っていた時期もありました。
でも、今思えば、お恥ずかしい限りです。
子供の様子なんてお構いなしで、「指導書通り」がいい授業だと勘違いしていたんですから。
そのような、未熟な経験の積み重ねで現在に至る訳ですが、レッスン歴16年目に入り、今では1人1人の個性とじっくり向き合った指導を常に心がけ、レッスンに取り組んでいます。
ピアノの楽譜には、「教本」と「レパートリー集」がありますが、「教本」は、音楽を勉強する上で、「目的」があり系統立てて作られているものです。
昔からある「バイエル」「ピアノランド」「メトードローズ」「トンプソン」「バスティン」・・・etc・
これらの教本を使ってレッスンをする時、当然、私たち指導者は、1曲1曲についての「目的」「ポイント」を深く熟知していることが大切だと、常に教材研究を行なっています。
ただ、器用に弾けるだけでなく、その「ポイント」を生徒自身も納得して積み上げていければ、土台のしっかりしたテクニックや音楽性が育っていくでしょう。
ただ、その「ポイント」「目的」も、全くみんな同じ状態にはならないこともわかっていないといけません。
「○○ちゃんは、できたのに・・・」とか、「○年生になったのに・・」とか、「なんで、いつまでたっても指がつぶれやすいの?」とか・・・・焦りは禁物!
1人1人骨格も、理解度も、好みも違うので、今、すべてこの曲の「ポイント」を完全にマスターできなくても、指導者がその子の様子をわかっていれば、正しく導いていくことができますね。
では、その「目的」に到達するためには、どのような「道筋」があるのか?
「この子には、このルートで行こう!」「この子には、このやり方で・・」と、1人1人に合った方法を考えるのです。
100人いれば100通りの指導法で取り組めるようになりたいと思って取り組んでいます。
私は、1人1人のカルテを作って、その子だけの「オリジナル」な方法を研究すしています。
私の友人たちは、とても熱心な先生方が多いので、個人のノートを作ったり、パソコンにその子のページを作って、きちんとデーター管理、研究してらっしゃる先生方もいらっしゃいます。
私は、まだ、それほどパソコンが得意ではないので、いまのところ、個人のノートに「日々のレッスンの様子」「うまくいかなかったところ」「今後の工夫」「これからのレッスン(道筋)」などを、書き留めています。
そして、その子の様子やマスターさせたいポイントがしっかり把握できたら、今度は、いよいよその子にしっかり身につく「教え方」を考えるのです。
いろいろなタイプの子供がいます。
*理論で伝えて、理解しやすい子。
*耳から聞いて、スッと入っていく子。
*手をたたいたり、体を使うことで納得する子。
*目で見たことが、わかりやすい子。
その子が、どんなタイプの子なのか、よく見て、方法を考えます。
私は、「理論から入るタイプ」だったので、まねっこで弾かせたりするのは、はじめ、よくないことだと思っていました。
もちろん、楽譜を1人で読めたほうがいいに決まっていますが、ある時、順番が違っていても「目的」と「ポイント」がずれていかなければいいんだ!と気がついたのです。
よく、赤ちゃんの成長段階で、「育児書」通りにいかない・・・と言って悩むお母様がいますよね。
しかし、「20歳になってオムツしてる子はいない」のです。
「2歳でオムツが取れなくたって、2歳1カ月で取れるかもしれない」
酢考えると、今楽譜を読むより、まず耳で聞いた音楽を楽しそうに弾くのが得意なら、それを制しないで、「いい耳してるねぇ~」と言いながら導いていった方が、数段やる気が出て、いい効果がでるのです。きっともう少ししたら、楽譜も読めるようになる。
指導者がきちんと「目的」を忘れず、根気よくアプローチしていけば、必ず出来るようになることを、長年の指導歴の中で実感しています。
焦らない!焦らない!焦らない!
「教える」ということは、しっかりとその子自身の中に根が生えるまで、根気強くアプローチしていくこと。
ゆっくり丁寧に「音楽の素晴らしさ」を「教え続けて」いきたいと思っています!!
レパートリー集は、「教本」で身に付けた「テクニック」や「知識」を十分に生かして、曲のな中で発揮するものです。
大好きな曲に出会えたら、本当に幸せですね。
指導者は、生徒さんと一緒に、その曲の時代、作曲家について、構成、などを調べて、曲に対して真正面から向き合っていく。すると、楽譜に書かれていないことまで、どんどん興味も広がり、表現したいことが生徒の中からわき出てくる。。。。。素敵な時間です。
この時大切なのは、先生が知っていることをポンポンと「教える」よりも、一緒に考えたり、「調べてきてね」と、自分でやらせることだと思います。
教育者は、教えることが大好きで、ついつい先回りして言ってしまう。
生徒たちは「うんうん。あ~そうなんですか~」とわかったように聞いているけど、自分で調べたほうが天と地ほどの差で理解していくし、その曲に対する思い入れも変わってくる。深くその曲を好きになる。
指導者は、ストレートに教えないで、生徒が理解する方法を、伝えればいいのだと思います。
時には、時間がかかって・・・つい、手や口を出したくなるけど、これも子育て同様、じっと待つ事がその後、独り立ちする大切な過程なのだということを忘れないでいたいと思うのです。